「医食同源」「食は薬なり」などと言い、また「身土不二」とも言って、健康のためには何を食べれば良いかという知識が最近、少しずつでも広まってきたことは大変結構なことと思います。
しかし、食養に熱心な人たちの中には、“食”を“物”の面からだけ、見ている人が見受けられるのは残念なことです。
同じ土地で、同じ作物を同じやり方で作っても、作る人の気持ちによって作物に宿「力」には差が出てきます。
また、同じ材料で同じ献立の食事を作っても、作る人の心構えによって、食べる人に与える影響が違ってきます。
そして、同じ物を食べても、食べる人の心によって、その食事の効果が変わってきます。
それは、すべての物(生物にも、無生物にも)に霊が宿り、「気」がこもっているからです。
ですから、食べる時は口、目、鼻などで、食物の味、色、形、香りなどを楽しみながら食べることも大切ですが、その食事が自分の前に現れるまでには、どれだけ多くの人々の労苦と「心」がこめられてきたかという事を思い、それに感謝するだけでなく、自分を養い生かすために、ここまで来てくれた食品に対しても感謝し、且つ、その食によって養われた心身の力を使って、世の人のために精一杯働くことを誓いながら、ひとくち、ひとくち、よく噛みしめて食べるべきです。
魚の骨がのどに刺さるとか、餅がのどにつかえるなどの事故は、食べる時の「心」の間違いに対する、神仏と食品からの警告と受け取るべきでしょう。
“万物の中で、人間が一番尊いのだ”などという考えは、思い上がりも甚しいと言うべきでしょう。
進 藤 義 晴